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2014年4月 園長 平 良 嘉 男

はじめに

イエス団はその名の通り、イエスをキリスト(救い主)として受け入れ新しく生まれ変わりクリスチャン(「キリストに属する者」の意)となった者たちが組織した。その代表が賀川豊彦である。
賀川豊彦は、イエスが「一粒の麦」として、その生涯を人類の罪のあがないと救いのために十字架にかかり自らの命を捨てたように、そのイエスの贖罪愛に満たされて幼子や貧困層にいる方々等、いわゆる社会的弱者の支援のため、またそのような状況を生み出す社会悪を是正するために自らも一粒の麦としてその命を捧げた。
イエス団はその賀川豊彦の意思を引き継ぎ、イエスの贖罪愛を実践する組織であり、一麦保育園はその賀川豊彦が設立した(1932年4月)園である。その保育は賀川豊彦が傾けた情熱と精神が今日まで受け継がれイエス団に連なる保育園や幼稚園等のみならず内外に大きな影響を与えてきた存在として認知されている。
そのような歴史と実績を有する保育園として、下記のとおりイエス団の「理念と憲章」、そして「ミッションステートメント2009」の下、「一麦保育目標」を掲げながら賀川豊彦の足跡から多くのことを学びイエスが愛してやまない園児たちの健やかな成長を育む。

イエス団理念(イエス団定款より)
イエス・キリストの贖罪愛に触れ、それを実践するために、社会矛盾からくる社会悪とたたかい、最微者(いと小さき者)に仕えるために生涯を捧げた賀川豊彦の精神を引き継いで福祉社会の実現を目指す。
イエス団憲章~(賀川豊彦献身90年となる1999年に制定)
一、 私たちは、賀川豊彦が実践したsettler(地域に生きる人々と共に歩む者)の精神を引き継ぐ。
一、 私たちは、自立と相互扶助を目指した開拓的・実験的事業の精神を引き継ぐ。
一、 私たちは、地域を越え、国境を越えて共に生きる平和な世界の実現に努めた精神を引き継ぐ。
ミッションステートメント2009(賀川豊彦献身100年となる2009年に制定)
わたしたちイエス団の実践は、1909年12月24日の賀川豊彦の献身に始まる。そして、イエスの愛に倣い、互いに仕えあい、社会悪と闘い、新しい社会を目指して多くの協働者とともに今日まで歩み続けてきた。
この歴史を検証し、働きを引き継ぎ、今、わたしたちはイエスに倣って生きる。

わたしたちは、いのちが大切にされる社会をつくりだす
わたしたちは、隣り人と共に生きる社会をつくりだす
わたしたちは、違いを認め合える社会をつくりだす
わたしたちは、自然が大切にされる社会をつくりだす
わたしたちは、平和をつくりだす
一麦保育園の保育目標(子ども像)
神と人に愛される、元気でやさしく賢い子

1.運営目標

(1)イエス団のミッションステートメント(以下「MS」という」)を具現化する。
  ・イエス・キリストを通して神の愛を伝えるキリスト教保育の実践
(2)一麦保育の充実を図る。
  ・一麦保育の三本柱、「コダーイ教育」「きょうだい保育」「自由形態保育」の工夫・改善に努める。
(3)全職員参加型の運営を構築する。
  ・開かれた「チーム一麦」の組織作り
(4)リスク・マネージメントを徹底する。
  ①施設整備や環境衛生、保育活動における危機管理体制の強化
  ②園児の危機管理能力の育成

2.運営方針

(1)MSの学びを深めるための環境整備をする。
  ・研修会や学習会等の実施
(2) 一麦保育の三本柱の研修と実践に努める。
  ・園内外の研修と公開保育の推進
(3) 新たに「トライアングル(TR;主任、副主任2人)会」を設置する。
  ① フロアリーダー会(FR;随時、栄養士、事務員、JBF担当を加える)やクラス担任会の充実を図りながら「チーム一麦」作りに取組む。
  ② 職員は、「①クラス担任 ⇒ ②FR ⇒ ③TR(主任・副主任<乳児・幼児>)⇒ ④職会 ⇒ ⑤園長」の流れで諸問題を処理する。
  ・園長室は「千客万来」。相談はいつでもOK!

3.キャッチフレーズ

子ども大好き「チーム一麦」

(1)自らの保育活動にビジョンを持つ。
  ・日々の保育活動(学級経営、課業等)にビジョンを持ち絶えず見直し、改善する。
(2)ビジョンを共有する。
  ・「チーム一麦」の一員として一人一人のビジョンをチームのビジョンとし、組織人としてチームのために何ができるかを考える。
(3)プロの保育士として「自ら持っている最善の能力やタレント(強み)」を園児に与える。
  ・各自のタレントを「活かし」、各自のタレントが「活きる」職場文化を創る。

4.具体的な取組み

(1)「MSデー(毎奇数月の1日」)」を設定し、イエス団の理念の具現化を図る。
  ・MSデーについては、相互に学びあうとともに、一麦便り、よい子ネット、正門掲示板等の各種媒体を通して保護者・地域への周知を図る。
   (園長が担当する)
(2)TR会・FR会・クラス担任会で一麦保育の運営全般の検証を行い、職会で共通理解を図る。
(3)日々、園施設全体の危険箇所のチェックと改善を行い、基本的な環境・衛生等のリスク・マネジメントを行う。
(4)職員のICT(情報通信技術)の向上を図る。;事務室の職員室機能化(PC導入)
  ①よい子ネットの保育記事を輪番制とし内外に園の様子を発信する。(TR会で割振)
  ・毎日記載しているクラス掲示板の内容を発信する。
  ②園長は適宜、イエス団や園全般等についての記事を掲載する。
(5)JBFの活動と沖縄平和研修を推進する。
  ・ハンセン病及び沖縄平和研修会への参加を促進・支援する。

5.イエス団「一麦保育園」の保育士像

 保育士は保育のプロとして園児たちを保育(養護と教育)する責任が担わされている。それゆえ、保育士にはその専門性と人間性が問われる。さらに、保育を通して子どもたちからの信頼を得るとともに、身近にいる大人として人生のモデルの一人でもある。「教育は人なり」であることを心したい。
 「子は親の鏡」と言われるが、「園の子どもは保育士の鏡」である。いわゆる、子どもたちは保育士自身の保育活動の成果そのものなのである。だから、保育士は子どもたちの園生活の様子を絶えず把握しながら、自らの保育活動を省みる必要がある。そして、子どもたちを通して自らの課題を見つけ、そのための指導法の工夫・改善に努めることが求められる。
 また、今日の社会は、新しい知識・情報・技術が政治・経済・文化をはじめ、社会の あらゆる領域での活動の基盤として飛躍的に重要性を増す「知識基盤社会」の時代とな った。それは、①知識には国境がなくグローバル化が一層進む。②知識は日進月歩で競 争と技術革新が絶え間ない。③知識の進展は旧来のパラダイム(考え方や認識の枠組み、規範)の転換を伴うため、幅広い知識と柔軟な思考力が重要となる。④性別や年齢を問 わず様々な活動に参画することが促進されるという社会である。
 その様な社会においては保育士自らも「課題を見いだし解決する力」「知識・技能の更新のための生涯にわたる学習」「他者や社会、自然や環境と共に生きる」など、変化に対応するための能力、いわゆる自らの人生を切り開き豊かな人生を実現するために必 要な「人間力」を身につけることが求められる。
そこで一麦保育園の保育士は、イエス団の「理念・憲章・MS」下、豊かな「人間力」を身につけるため絶えず自己研鑽に励みながら、一麦保育園の保育目標「神と人に愛される、元気でやさしく賢い子を育む」を達成するため日々の保育活動に取組んでいる。